窒化アルミ(AlN)基板から銅ベース基板への置き換え検討
プリント基板の設計や製造において、放熱性能の重要性が高まっています。
特にパワーエレクトロニクス分野では、窒化アルミ(AlN)基板が優れた特性を持っていますが、近年では銅ベース(Cuベース)基板への置き換えも進んでいます。
本記事では、両者の特徴を比較し、銅ベース基板への置き換えの可能性やメリット、課題を考察します。
1. 窒化アルミ(AlN)基板と銅ベース基板の特性比較
項目 | AlN基板 | 銅ベース基板 |
---|---|---|
熱伝導率 | 約170~200 W/m·K | 約385〜400 W/m·K(銅自体の値) |
電気絶縁性 | 高い(絶縁体) | 低い(導体、絶縁層が必要) |
機械的強度 | 硬く脆い | 柔軟性があり衝撃に強い |
コスト | 高価(材料・加工コスト高) | AlNより安価だが絶縁層によりコスト増 |
加工性 | 加工が難しい | 加工が容易 |
使用環境 | 高温・高周波向け | 一般的なパワーエレクトロニクス向け |
2. 銅ベース基板への置き換えメリット
(1) コスト削減
窒化アルミは材料そのものが高価ですが、銅は比較的安価で入手も容易です。特に大量生産品では大幅なコストダウンが可能になります。
(2) 加工性向上
銅は加工性が非常に高く、穴あけやパターン形成が容易で設計自由度が増します。
(3) 熱伝導性の向上
銅の熱伝導率は高いため、設計次第で窒化アルミ基板と同等かそれ以上の放熱性を実現できます。
(4) 強度・耐久性
銅ベース基板は柔軟性があり、振動や衝撃による破損リスクを軽減します。
3. 置き換えに伴う課題と対策
(1) 電気絶縁性の確保
- 課題:銅は導体のため、そのままでは電気的絶縁性が確保されません。
- 対策:
- 絶縁層(ポリイミドやセラミック層)を追加
- IMS(絶縁金属基板)技術の活用
(2) 放熱設計
- 課題:熱伝導性は高いが、熱の流れを最適化する必要があります。
- 対策:
- 銅ベース厚みの調整
- ヒートシンクや熱伝導材料の組み合わせ
- サーマルビアの適用
(3) 信号特性の変化
- 課題:高周波用途で信号特性が変化する可能性があります。
- 対策:
- 適切な誘電体材料(PTFE系材料など)を使用
- シグナルインテグリティ(SI)を考慮した設計
4. 置き換えに適した用途・難しい用途
適した用途
- パワーエレクトロニクス(電源モジュール、LEDドライバ、EVインバーターなど)
- コスト削減が求められる大量生産品
- 振動や衝撃が多い環境
難しい用途
- 超高温環境(> 200°C)
- 高周波用途(RF・マイクロ波)
まとめ
銅ベース基板への置き換えは、適切な絶縁設計や放熱設計を施せば、コスト・加工性・放熱性など多くのメリットを活かせる現実的な選択肢です。
ただし、使用環境によっては慎重に検討することが必要であり、用途に応じた最適な基板選定が重要となります。