基板パターンの電流容量を考える―設計で押さえるべきポイントと計算の基本―

はじめに

プリント基板の設計で必ず直面するのが、「どのパターン幅でどれだけ電流を流せるのか?」という問題です。
CAD上では簡単に線を引けますが、実際には銅厚・温度上昇・放熱条件によって許容電流は大きく変わります。

この記事では、IPC規格に基づく計算方法と、設計時に押さえておくべき実践的なポイントを解説します。

1. 電流容量の基本的な考え方

許容電流の定義

一般的に、プリント基板上の導体の許容電流は「温度上昇が10℃以内に収まる電流量」で定義されます。

IPC-2152(旧IPC-2221)では、電流容量 I は次の近似式で表されます:

I = k × (ΔT)^0.44 × (A)^0.725

各パラメータの意味:

  • I:許容電流(A)
  • ΔT:温度上昇(℃)
  • A:断面積(mm²)= パターン幅 × 銅厚
  • k:定数(外層・内層、銅厚により異なる)

重要なポイント

  • 断面積を2倍にしても、電流容量は約1.6倍程度にしかならない(指数が0.725のため)
  • 外層パターンは放熱しやすいため、内層より電流容量が大きい
  • 実際の製造では「銅厚誤差」「放熱環境」「基材特性」により理論値と差が出る

2. 設計で使える目安

電流密度による簡易判断

一般的な安全基準:

  • 外層パターン: 電流密度 10A/mm² 以下
  • 内層パターン: 電流密度 5~7A/mm² 以下

計算例:

銅厚70μm、パターン幅2mmの場合
断面積 = 2mm × 0.07mm = 0.14mm²
安全電流 = 0.14 × 10 = 1.4A(外層)

IPC-2152に基づく目安(温度上昇10℃、外層)

パターン幅銅厚35μm銅厚70μm銅厚105μm
0.5mm約1A約2A約3A
1.0mm約2A約4A約5A
2.0mm約4A約7A約9A
3.0mm約6A約9A約12A
5.0mm約9A約14A約18A

※これらは理論計算による目安値です。実際の設計では各種条件を考慮し、基板メーカーやIPCツールで検証してください。

3. 設計での実践ポイント

(1)内層は外層より電流容量が低い

内層は基材に挟まれて放熱が制限されるため、同じ銅厚でも外層の約60~70%の電流容量と考えるのが安全です。

対策:

  • 内層電源ラインはできるだけ太くする
  • 複数ラインに分けて並列化
  • ビアで外層とつなぎ放熱経路を確保

(2)連続通電かパルス通電かを区別

  • 連続通電(電源ライン等):定格を厳守
  • パルス通電(スイッチング回路等):デューティ比を考慮した実効値で評価
  • モータ制御回路:繰り返し発熱による銅疲労に注意

(3)安全マージンの確保

長期安定動作を考えるなら、計算値の70~80%を上限に設定するのが理想です。

設計例:

必要電流:3A(連続)
安全率を考慮:3A ÷ 0.7 = 4.3A以上必要
→ 銅厚70μm、幅2mm(理論値約7A)を選択

(4)高温環境への配慮

  • 周囲温度が25℃より高い場合、温度上昇マージンが減少
  • 密閉筐体内など放熱が悪い環境では、さらに余裕を持たせる
  • 部品の近くは放熱条件が悪化するため注意

4. 設計時に確認すべきこと

✓ チェックリスト

  • ☐ 最大電流値と連続/間欠を明確化
  • ☐ 外層/内層を区別して計算
  • ☐ 安全マージンを考慮(70~80%)
  • ☐ 周囲温度・放熱条件を確認
  • ☐ 基板メーカーの推奨値と照合
  • ☐ 必要に応じて熱シミュレーション実施

有用なツール

  • IPC-2152 Calculator(無料オンラインツール)
  • 基板メーカーの設計ガイドライン
  • 熱解析CAD(Ansys、SOLIDWORKS等)

まとめ

プリント基板のパターン設計では、理論計算と実践的な安全マージンの両方が重要です。

設計の基本方針:

  1. IPC規格や電流密度基準で初期検討
  2. 安全率(70~80%)を考慮
  3. 内層は外層の60~70%で計算
  4. 不安があれば基板メーカーに相談

熱解析環境がない場合でも、こうした基準を押さえることで、信頼性の高い設計が可能になります。


参考情報:

  • IPC-2152: Standard for Determining Current Carrying Capacity in Printed Board Design
  • 各基板メーカーの設計ガイドライン

※本記事は一般的な設計指針を示すものです。実際の製品設計では、必ず基板メーカーの仕様や実測データに基づいた検証を行ってください。

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