プリント基板の市場と動向~5GとIoTの影響~
プリント基板(PCB)は、自動車・通信機器・産業機器・家電・医療機器まで、すべての電子機器の中核を担う部品です。
近年、5Gの急速な普及とIoTの拡大により、PCB市場の構造そのものが大きく変わり始めています。
■ PCB市場の最新動向(2025)
2025年の世界プリント基板市場は、約708億ドル(約11兆円)規模と推計されており、2035年には1100億ドル超まで成長すると予測されています。
5G基地局、データセンター、EV(電気自動車)、ウェアラブル機器の急成長が牽引しています。
特に次の3分野が市場成長の中心です。
- 通信インフラ(5G/次世代ネットワーク)
- 車載(EV化・ADAS・パワーエレクトロニクス)
- データセンター・AIサーバー用途(高多層/高放熱/高周波)
PCBは“ただの電子部品”ではなく、システム性能を左右する基幹技術へと認識が変わりつつあります。
5Gがプリント基板に与える影響
5Gは「高速・大容量・低遅延・多数同時接続」の特徴を持ち、周波数帯も4Gより高く、ミリ波帯も利用します。
その結果、プリント基板には次の要求が急増しています。
● 低損失材料(Low-Dk / Low-Df)
高速信号は損失が大きいため、一般FR-4では限界があります。
● 微細パターン化・HDI(高密度配線)
高周波回路はノイズが干渉しやすいため、配線精度・層間構造が重要。
● 高多層化
5G基地局では 20〜30層以上 の多層基板が一般的になりつつある。
● 放熱対策
高周波ICは発熱が大きく、放熱基板(メタルベース・厚銅)の需要が増加。
5Gインフラや端末が進化するほど、基板構造は複雑化し、性能と信頼性がより強く求められています。
IoTがプリント基板に与える影響
IoTは「すべてのモノがインターネットにつながる」時代を作りつつあり、センサー・通信モジュール・エッジデバイスの需要が爆発的に増えています。
IoT向け基板のキーワードは以下です。
● 小型・薄型化
ウェアラブル、スマート家電、医療デバイスでは、省スペース化が必須。
● 低消費電力
電池駆動が多いため、低抵抗設計・省電力回路が求められる。
● リジッドフレックス/FPCの拡大
折り曲げ可能な基板の需要が急速に増加。
● 耐環境性能(耐熱・耐湿・耐振動)
屋外センサー・FA設備では高信頼性材料が必要。
IoTの拡大により、「小型・軽量・高信頼」の高付加価値基板需要が確実に増えています。
現在のPCB業界トレンド(2025年)
最新の市場データから見える、今のPCB業界の大きな流れは以下です。
① AIサーバー・データセンター向けの多層基板需要が急拡大
AIの進展により、基板メーカーの中には 40%以上の成長 を示す企業も出ています。
高多層・高周波・大電流対応基板が今最も熱い分野。
② EV化で厚銅基板・高放熱基板が伸び続ける
バッテリ、インバータ、OBC、モータ制御などで
・厚銅基板(3oz〜6oz)
・メタルベース基板(アルミ・銅)
・高熱伝導材料(例:FGHP)
の需要が大きく増加。
③ リジッドフレックス・FPC市場の急成長
折りたたみスマホ、ウェアラブル、医療機器が普及し、FPC市場は 年8%超成長。
④ 製造拠点の中国依存から脱却が進行
中国リスクにより、インド、ベトナム、メキシコなどでの生産が拡大。
⑤ サステナビリティ要求の高まり
環境規制強化に伴い、
低環境負荷材料・廃材リサイクル・CO₂削減工程 が注目されている。
まとめ:5GとIoTは基板業界を再定義している
5Gの高速通信化、IoTの爆発的普及、EV化、AIサーバーの増大により、
プリント基板にはかつてないほどの 高性能化・高信頼性・高付加価値化 が求められています。
- 低損失・高周波対応材料
- 高多層化・微細パターン
- 高放熱・大電流対応構造
- 小型・薄型・フレキシブル化
- 世界的な供給チェーンの再構築
これらの潮流は今後さらに加速します。
プリント基板業界は、単なる電子部品製造から、高度技術産業の中核へと立ち位置を変えつつあります。
5GとIoTは、その変革を最も強く後押ししている要素です。


