プリント基板の市場と動向~5GとIoTの影響~

プリント基板とは、絶縁性のある板材に導電性の金属を配線として形成したもので、電子機器に必要な部品です。

プリント基板は、自動車やスマートフォン、パソコンなど様々な分野で使われていますが、近年では5G(第5世代移動通信システム)やIoT(モノのインターネット)といった技術革新がプリント基板業界に大きな影響を与えています。

 

5Gとは、従来の4Gよりも高速・大容量・低遅延・多数同時接続という特徴を持つ次世代の通信規格です。

5Gでは、高周波帯域を利用することで高速通信を実現しますが、その反面、伝送損失や干渉などの問題も発生します。

そのため、5G対応の基地局や端末には高周波対応のプリント基板が必要になります。

高周波対応のプリント基板とは、伝送路や回路素子が最適化されたもので、低損失・低ノイズ・高精度・高信頼性などが必要となってきます。

一般的な基板材料以上に信頼性が求められる高周波対応のプリント基板では、常に新材料や新技術が求められています。

例として、

  • 低誘電率・低誘電正接材料
  • 高密度積層技術
  • 微細パターン化技術
  • 埋め込み素子技術
  • 高集積化モジュール技術

などが挙げられます。

 

一方、IoTとは、インターネットに接続されたさまざまなモノ(センサーやカメラなど)がデータを収集・交換・分析することで新たな価値を創出するシステムです。

IoTでは、多種多様なデバイスが連携することでスマートシティやスマートファクトリーなどを実現することが出来ますが、そのためには小型化・省エネ化・耐環境性能の向上などに対応したプリント基板が必要となってきます。

 

5GやIoTといった技術革新はプリント基板業界に大きな影響を与えています。

プリント基板の需要は増加する一方で、これまで以上に高度な技術や品質が求められるようになってきました。

これらの課題に対応するために、新材料や新技術の開発・導入・普及に努めています。

 

プリント基板業界は、5GやIoTといった技術革新の波に乗り、市場規模を拡大してきています。

日本電子回路産業協会(JPCA)によると、2019年度の電子回路基板(プリント配線板、モジュール基板)の世界市場規模は約7兆円でしたが、2020年度は約7.5兆円 、2023年度は約8.6兆円 と予測されています。

特に自動車や情報通信端末などの成長分野が牽引役となっています。

しかし、コロナ禍や貿易摩擦などの外部要因の不確実性などによる、半導体不足、材料入手性の悪化、エネルギーコストの増大などの課題もまだまだ抱えています。

これらの課題に対応するためには今まで以上に品質、技術力の向上に注力することと、今後の市場の動向にも一層目を向けて、ニーズに応える製品やサービスを提供することが重要です。

プリント基板業界は、5GやIoTといった技術革新の波に乗り遅れないように、常に変化に対応できる柔軟性と創造性を持つことが求められています。