なぜプリント基板には表面処理が必要なのか?

今回は、プリント基板の銅の保護を目的とした表面処理について書いてみたいと思います。

プリント基板の表面にはレジストが塗布されていない露出したランドやパッドと呼ばれる電子部品を半田(はんだ・ハンダ)付けする部分があります。

ランドやパッド部分は銅ですので、何も処理していない状態では酸化が進行し錆びてしまうのです。錆が有ることで、部品を実装する際にうまく半田が付かず、不良となるケースがあります。

銅の酸化防止の為には、銅の表面を酸化しにくいめっき(メッキ・鍍金)処理や酸化防止を目的とした薬剤によるコーティングをすることが必要となり、これらを表面処理と言います。

表面処理の方法には種類がありプリフラックス処理(タフエース処理)、共晶半田レベラー、鉛フリー半田レベラー、無電解金めっき、電解金めっきなど様々な種類があります。

部品の実装条件や製品の仕様(RoHs対応など)に合わせて適切な表面処理を選択する必要もありますので、どれが対応しているのか不明な場合などには、確認しておく必要があります。

水溶性プリフラックス処理

プリフラックス処理は、プリント基板製造で最も一般的に使用される表面処理方法です。

コストが安価で実装時の半田との接続信頼性に優れている為、よく選ばれております。

しかし、プリフラックスを塗布してからの保管期間の推奨は、3カ月程度しか保証されていないため、長期の保管には向いていないという点があります。

※コストが低く抑えられるが保管期間が短いのがプリフラックス処理です。

共晶半田レベラー

共晶半田レベラーとは、HALと呼ばれる装置内で溶融した半田にプリント基板を浸漬させ、ランドやパッド部の銅に半田をのせる表面処理方法です。

余分な半田はエアーナイフと呼ばれる装置の熱風で吹き飛ばして仕上げています。

ハンダはSn(錫)63%とPb(鉛)37%の合金で構成されており、近年では半田成分の鉛が人体へ影響を及ぼす恐れがあるということで鉛なしの半田レベラー処理が増えてきています。

※人体への弊害が懸念されるが半田の濡れ性が優れているのが共晶半田レベラーです。

鉛フリー半田レベラー

鉛フリー半田とは、無鉛半田・Pbフリー半田とも呼ばれています。

鉛フリーはんだは、鉛含有率1000 ppm (0.1wt%) で構成された合金で、RoHS対応の半田レベラーとなります。

共晶半田よりも融点が高く、半田濡れ性が劣る為、実装時に問題が起こることが有りましたが、近年はかなり改良されてきているようです。

※鉛を使用していない為 人体への影響は少ないが、濡れ性が悪く、半田ゴテの温度管理が難しいのが鉛フリー半田レベラーの特徴です。

※弊社では共晶半田レベラー、鉛フリー半田レベラー処理共に対応しております。

ニッケルめっき

非常に光沢があり、錆びにくく装飾・防食用に使用ています。

硬度(HV)が高く、Ag硬度(90~110HV)に対しNi硬度は(450~550HV)あります。

このことから、コネクタ端子又は、スイッチの接点(摺動子)に使用されます。

その他にも、ガルバニック腐食を抑えるためにもニッケルめっきを行います。

ガルバニック腐食とは、イオン化傾向の大きい金属とイオン化傾向の小さい金属を接触させると腐食してしまう現象です。

異種金属間での電位差が発生した際に、局部電池となり金属がイオン化して腐食が起こってしまう事を言います。

このガルバニック腐食を抑えるために、ニッケルめっきを施しガルバニック腐食を予防します。

無電解金めっき

無電解金めっきと電解金めっきは名前も仕上がりも似ていますが用途とコストが全く異なります。

無電解金めっきはNi、Auの合金処理で基本的にはニッケルメッキ層が3.0μで金めっき層が0.03μmで成分のほとんどはニッケルとなっています。

半田濡れ性が抜群に優れており、表面の平滑度が高く小さな部品の実装等に向いています。

電解金めっき

電解金めっきは金めっき厚が0.3μmと、無電解金めっきに比べ厚みがあります。

その分コストも高くなります。

(ファミコンのカセットなどのように)何度も抜き差しするような箇所等に向いています。

半田濡れ性はよくない為、部品実装には不向きです。

無電解ボン金

主にCOB用途特にワイヤーボンディング用パッドの金メッキ処理の事を言います。

微細化及び高密度化により、リード線を配置しにくくなったため、実用化されました。

ニッケル下地にソフト金めっきが施されています。

電解ボン金

ワイヤーボンディング用パッドの金めっき処理の事を言います。

現在の主流は無電解ボン金になっています。

※弊社では外注にて無電解金めっき、電解金めっきともに対応しております。

半田めっき

電解半田めっき方式のみ対応。

以前は、金レジ法に対抗して多く採用され、ランドレスに多く展開されていました。

昨今は、環境問題もあり、半田めっきを使用しない違う方式に変わってきています。

ただ、レベラー仕様は厚みばらつきが大きく、電極端子上の膜厚は1~50µmの公差を持ち、半田めっきでは20µm±5µmと高精度な為、惜しまれる。


今回は、露出した銅を保護するために行う表面処理の説明でした。

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